遺言書のトラブル
遺言書は、自筆で書いて保管しておいたものでもかまいませんが、法律上有効になる要件が決められています。
せっかく遺言書を書いても、この要件が満たされた遺言書でないと法律上は無効ということになり意味のないものになってしまいます。
また、法律上、相続人の相続する権利を遺言書によっても制約できない割合(遺留分)が存在し、この遺留分を無視した遺言書を書くと、後々になって相続人間で遺留分をよこせという主張(遺留分減殺請求)をめぐって争いが生じる場合があります。
また、現代は様々な録音・録画方法が発達していますが、遺言は遺言書という形で文書になっていないと効力がありません。遺言者の言葉を収録したビデオ、録音テープなどは遺言書としての法律上の効力がないので要注意です。
こんな人は、遺言書を是非作成してください。
遺言書がなければ相続財産は法定相続分に従って相続されることになります。兄弟であれば相続分は平等です。こんなときに「長男夫婦には世話になったのでたくさん相続させたい」という思いがあるのなら、遺言書を書かないと、その思いをとげることはできません。
自分の息子たちは兄弟仲が良いので口頭で話しておけば、自分が望むように遺産を分けてくれるだろうと親なら誰でも思いがちです。しかし、特に息子たちにも家族がある場合、特定の兄弟がより多く相続するような遺産分割をだまっていられなくなるのが常です。自分の子供たちに自分の死後に無駄な争いをさせないためにも遺言書は作成すべきです。
現在自分が住んでいる家と土地に自分が死んだ後も特定の相続人にそのまま住んでほしい場合、遺言書でその特定の相続人に家と土地を相続させる遺言をしておかないと、その家と土地は全ての相続人が共同で相続することになります。
そうなれば、そこに住まわせたいと思っていた特定の相続人が、そこに住むことができなくなる場合も生じます。このような場合には、その特定の相続人に家と土地を相続させるという遺言書をきちんと書きましょう。
遺産の分割について遺言書を書くためには、自分の全ての財産がどれくらいあるかを把握しないといけません。
遺言書を書くということは自分の全財産を確認するということにもなりますので、そのためにも遺言書を書くことをお勧めします。
特に個人事業主などの場合、営業のために借入れなどの借金をしているはずですが、自分が死ねば、相続人は故人の借金も相続することになります。
もし、今時点で相続が始まったとしたら、はたして借金の方が財産よりも多いのかどうか。そういうことを確認するためにも遺言書の作成をお勧めします。
遺言書はいったん書いても、それを撤回することができます。また、遺言書は何回でも書き直しができます。遺言書を書いても、その内容が永久に確定するわけではないので、その点は安心してください。
遺言書があっても、相続人全員の合意があれば遺言書と異なる遺産分割をすることは可能です。その意味では、遺言書は、相続人を完全に拘束するものでもありません。
法定相続人以外の人に自分の財産の一部を譲り渡したいときには、生前贈与という方法以外では遺言をするより他に方法がありません。相続人ではない人に自分の死後に財産を分け与えたいときには遺言をしなければなりません。
遺言に関するQ&A
- 自筆で遺言書の書面を作成したいのですが、注意点は?
- 自筆で書く遺言を自筆証書遺言といいます。自筆証書遺言は、全文が自筆でなければなりません。パソコンやワープロで作成して署名だけ自筆というのは認められませんので要注意です。
また、本文の他に日付も自署されている必要があります。日付のない遺言は無効になると考えておいてください。
自署とともに押印も必要です。押印は必ずしも実印でなければならないとはなっていませんが、後々のトラブルを避けるためには実印を押印すべきでしょう。自筆証書遺言は、このように①全文自署、②日付、③押印の3点セットが必須です。 - 自筆証書遺言を書いてみたのですが、訂正したい部分があります。どのように訂正すれば良いでしょうか?
- 自筆証書遺言を訂正する場合、定められている厳格な方法によって加除訂正を行わないと、最悪の場合、遺言そのものが無効になるときもあります。なので十分に注意してください。
自筆証書遺言の加除訂正をするときには、まず遺言者が該当個所を指示して、これを変更した旨を欄外に附記します。次に、これに署名をして、かつ、変更した場所に遺言書に押した印鑑を押します。変更する部分に線を引いて書き込みをし、そこに訂正印を押すだけでは有効とはなりません。
ただ、単なる誤字の場合には、訂正したい個所に二重線を引き、その近くに訂正印を押すなどすれば良いとされています。いずれにせよ、訂正の仕方に不備があると、遺言そのものが無効になる場合もあるので、トラブルを回避するためには、新たに遺言書を作成し直すのがベストと思います。
自筆証書遺言以外の公正証書遺言、秘密証書遺言は加除訂正はできないことになっていますので、訂正したいところがあれば、新たに書き直すことになります。 - 公正証書遺言を作成したのですが、これは公証人に公的に証明してもらった遺言書ですから、書き直すためには、もう一度公正証書遺言を作らなければならないのですか?
- まず、遺言はいつでも新しく書き直すことができます。そして、新たに作る遺言書の方式は、前に作成した遺言書の方式と同じである必要はありません。つまり、公正証書遺言の後に、自筆証書遺言を作成することができます。
前に作成した公正証書遺言の内容と異なる自筆証書遺言を新たに作成すれば、自動的に前に作成した公正証書遺言を撤回したことになります。ただし、自筆証書遺言は、上に書いた3点セットがきちんと備わっていないと無効になってしまうので、その点は十分に注意してください。 - 私の父は認知症ですが法律上有効な遺言をすることができますか?
- 遺言書を作成するには遺言書を作成するに足る判断能力が必要です。遺言の意味や遺言書に書いてある内容を理解できない状態にある人は遺言書を作成することができません。高齢者が遺言書を残した場合に、相続人の一部から、判断能力がない状態で別の相続人に書かされた遺言だから無効であるとして遺言書の有効・無効が争われることはよくあります。
ただ、家庭裁判所に後見開始の決定をしてもらい成年被後見人になっている場合には、成年被後見人が本心に復しているときに、医師2人以上が立ち会うことを条件として遺言書を作成することができます。このとき、後見人が被後見人の直系血族、配偶者、兄弟姉妹である場合を除いて、後見人自身やその配偶者、後見人の直系卑属(子など)が利益を受ける遺言は、公正を守るために無効とされます。
成年被後見人であっても、本心に復するときが全くない状態であれば遺言をすることはできないということになります。 - 夫婦の共同名義で子供たちのために遺言書を書いておくことはできますか?
- 共同名義の遺言は禁止されています。遺言は単独名義でしなければいけません。これを共同遺言の禁止といいます。
もっとも、一見共同名義のように見えても、それぞれの遺言が明確に分離できるような場合には有効となる余地はあります。しかしながら、相続人間で「共同遺言だから無効だ」「いや共同遺言ではないから有効だ」という争いを生じさせるおそれがあり、いずれにしろ紛らわしいことに違いはないので、遺言は明確に単独ですべきです。
遺産に関係のない「兄弟仲良く」といった願いやメッセージをどうしても夫婦共同で残しておきたいというのであれば、手紙などの形で残しておくと良いでしょう。
遺言書の種類とメリット・デメリット
遺言署の種類で一般的なものは、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つです。他に、危急時遺言や隔絶地遺言という特殊なものがありますが、通常は①~③の遺言で事足りるでしょう。
自筆証書遺言のメリットは、自分が好きなときに好きな場所で自筆で書けば良いので作成に費用がかからず、ややこしい手続も必要ない点です。
自筆証書遺言のデメリットは、紛失したり、誰かに偽造・変造されたりするおそれがあろことです。また、せっかく自筆証書遺言を書いて自宅のタンスの奥にしまっておいたけれども、自分の死後に、誰も遺言書の存在に気付かなかったということもありえます。さらに、遺言書の内容をめぐって解釈に争いが生じたり、相続人の誰かが、「遺言書を書いたときに既に故人は認知症状態だったから遺言書は無効だ」と言って争いになったりするのは自筆証書遺言の場合が最も多いです。特に、弁護士に相談することなく遺言書を書いた場合、あいまいな表現や、不十分な言い回しなどで遺言書を書いてしまい、後々の争いのタネになってしまうことがよくあります。
公正証書遺言は、公証役場の公証人が立ち会って作成し、かつ、遺言書の原本を公証役場に保管するものです。公正証書遺言のメリットは、偽造・変造のおそれがなく、また、自分の死後に相続人が遺言書の内容を巡って争うことが極めて少なくなるということです。なぜなら、公正証書遺言の内容がおかしいと主張するためには、公証人が行った遺言書に対する公証が間違っていたということを証明しなければなりませんが、これは、まず無理だからです。また、公正証書遺言の原本が公証役場に保管されるので、紛失の心配もありません。
公正証書遺言のデメリットは、費用がそれなりにかかるということ、公証人に公証してもらう手続のため公証役場に出向くなどしなければならないこと、公証人の他に証人2人以上の立ち会いが必要なことです。公正証書遺言作成の手数料は、財産の金額と相続人の数によって変わってきます。また、証人は、相続人になる予定の人はなることができません。通常は、弁護士などに頼むことが多いです。
秘密証書遺言は、封書に入れて封をした内容が秘密なままの遺言書を公証人と証人2人以上の立ち会いのもと、本人の書いた遺言書であることの確認だけを公証人にしてもらうものです。したがって、秘密証書遺言のメリットは、公証人や立ち会った証人にすら遺言書の中身を秘密にしておけるということです。
秘密証書遺言のデメリットは、遺言書が公証役場に保管されることがなく、遺言書を作成したことが公証役場の記録に残るだけなので、自筆証書遺言の場合と同じように、紛失の危険性などがあるということです。また、遺言書の内容は書いた本人しか知らないので、遺言の内容に不備がある可能性があります。



















